第1回「日本を買い叩け!」:西野昭吾(宇崎竜童)
ドラマ「ハゲタカ」の第1回目のハイライトは、老舗旅館「西乃屋」の債権を巡る攻防だ。
半年前に観た前回と今回とでは、同じストーリーなのに受けた印象がかなり異なっていて自分でも驚いた。
理由のひとつは、前回、冒頭の15分ほどを見のがしていたこと。おそらく、私がテレビをつけた場面は、外資ファンド「ホライズン」の鷲津政彦が西乃屋を訪ねていくところから。
そのため、血も涙もないハゲタカがいきなり乗り込んできて借金返済を迫り、善良な旅館の主人を苦しめているような印象をもっていた。
が、今回、「ハゲタカ」のストーリーを冒頭からよく見ると、どうもそう単純な構図ではないとわかった。
宇崎竜童が演じる西乃屋の主人・西野昭吾は、先代の父親からこの旅館を受け継いだという設定だ。
このため、自らの意思で起業し、経営手腕を発揮して集客してきたわけではない。
むしろ、偉大だった父親の後を継いだ、苦労知らずの2代目だ。悲しいことに、西野昭吾には父親と同じビジネスセンスがない。息子の治にもそれを指摘される。
三葉(みつば)銀行の芝野健夫(柴田恭兵)が債権回収に出向いたときの、彼の「情に訴えて猶予を迫る」甘えた態度にそれが表れている。
「お宅とは先代からの長い付き合いなんだからさあ」みたいな、日本的なナアナアの姿勢。これに苦笑しながら応じる銀行員の芝野も日本的だ。
それが、バルクセールで外資のホライズンに西乃屋の債権が渡ってから、事態は急変する。
旅館を手放したくないなら2億円を用意しろ、と鷲津に通告された昭吾はにわかに顔色を変える。
相手が日本人でも外資のやり方は違う、と彼が気付いた瞬間だった。
半年前の放送で印象に残っていたのはこのあたり。金策尽き果ててぼろぼろになっていく中年男の悲哀を、宇崎竜童が鬼気迫る表情で見事に演じ切っている。
夜中に自動販売機を何台もこじあけ、散らばった小銭を狂ったようにかき集めてポケットに入れていく昭吾。泣きながらそれを止めようとする妻。この時点で彼の目は正気を失っていた。
返済期限が来て鷲津に土下座するも聞き入れられず、昭吾はうつろな目で鷲津を見上げ、絞り出すようなかすれ声で「・・・ハゲタカ!」とののしる。
その後、失意のうちにふらふらと大通りへ足を踏み出し、大型トラックにひかれて非業の最期を遂げる。あれは事故じゃなくて自殺だ。
前回見たときは、「ハゲタカの餌食になった、かわいそうな旅館の主人」だと思った。
でも、今回の感想は違う。責任は経営手腕のなかった昭吾自身にあるのではないか?
あんなに自分を追い詰めて死ななくてもよかったのに。鷲津が提案したように、経営の才覚ある息子といっしょにイチから出直せばよかったのに。
昭吾の生き方を、自らの任務の重圧に耐えかねて死を選ぶ多くの日本人男性(ビジネスマンや政治家)に重ね合わせてしまった。